ゼロ想インタビュー

『ゼロ想』の執筆動機について宇野氏は「東浩紀さんの設定した問題」を更新したかったと語る。


「終わりなき日常」をどう生きるか。これが東浩紀以前の議論だった。大きな物語が凋落し、生きる意味が社会から与えられなくなった時代においてどう生きるかという問題だ。


この問題への姿勢としては大きく分けて2つの立場があった。ひとつは大きな物語を捏造するという立場。戦後民主主義でも伝統的共同体の復興でもなんでもいい。ないとわかってても「あえて」物語を捏造し、人々に生きる意味を供給しようという立場だ。もうひとつの立場は物語を仮構せず、生きる意味がないままの世界をまったりとやりすごす技術を学ぼうとする立場だ。前者は大塚英治や福田和也、後者は宮台真司の立場である。


この前者の立場は、「アイロニカルな没入」と呼ばれた。それは無根拠であると知りながらも、「あえて」特定の価値観や物語を正しいものであるとみなしてコミットしていく態度だ。ところがその後、物語への没入のあり方に変化が起こる。ゲームをプレイすることにより、ベタな物語にも没入してしまうというタイプのものが台頭してくる。これを宇野氏は「アーキテクチュアルな没入」と言っている。


後者の一例としては『電車男』がある。電車男は匿名掲示板2chの書き込みから発生し、本やドラマにもなったという経緯をもつ作品である。掲示板の投稿をリアルタイムで見て、ときにはレスを書き込み、返答を貰いというやりとりをしているうちに物語に没入してしまう。かつて必要とされたアイロニーアーキテクチャーに代替されてしまったというわけだ。


では宇野氏はこの問題設定をどう更新したのだろうか。



2東の議論を読む

「あえて」信じるアイロニカルな没入から
コマンド操作によるアーキテクチュアルな没入(ゲーム的リアリズム)へ

意識的選択から無意識的没入へ

例 電車男

3アーキテクチュアルな没入の先

ソーシャルメディア的なもの

427p
セカイ系は男性主体を全肯定してくれる女性の擬似人格での比喩を試みた物語

男性のかわりに世界の運命を背負った美少女が悪と戦ったり世界を救ったりする。そして、そんな彼女に無条件に愛されることで主人公の男性は自己実現を果たしていく。

女性にならまだ大きな物語が機能しているはずだ、女性ならまだ近代を生きられるはずだという幻想。これはポストモダンからの逃避。

ゼロ年代のゲームプレイヤーたちは与えられた状況で生き延びるかだけじゃなく、ゲームのルールを書き換えることで世界を変えようと試みていた。

大きな物語から大きなゲームへ
大きなゲームは将棋やトランプのようなゼロサムゲームではない
ひとつのルールの上に無限のカードが追加されていく

432p
マッシュアップ
いくつかの曲を混ぜ合わせて新しい曲をつくる
複数のアプリケーションを組み合わせて新しいサービスをつくる
地図+天気=地図上で天気を見れるサービス

リミックスとは、一度完成した音楽をもう一度ミキシングし直す作業

ミキシングとは、「例えばボーカルにリバーブをかけたり、リードギターを右から聞こえるように、バックギターを左から聞こえるようにしたりするために行うテーブル上の操作で、曲全体のバランスを調整したり、目立たせたいところを目立たせたりする作業」

拡張現実的想像力
初音ミク
コミュニケーションという現実が作品という虚構を生み出す
現実と虚構の境界が曖昧
虚構は、ここではないどこかに連れていくものではなく、いまここの現実を多重化して読み替えていく拡張現実的なものとして扱われている。


ライトノベルはより優れたキャラクター消費のためのテキストが模索されている。
また、「拝金」も「もしドラ」もテクストだけじゃなく、その背後にある情報網(IT業界、ドラッカー思想)へのアクセスが志向されている。こうした小説もまぎれもない小説であり、無視することはできない。

コミュニケーションの回復可能性
ゼロ想
アーキテクチュアルな没入を対等なプレイヤー同士のコミュニケーションで開く
メタ空気系
木更津キャッツ
ソーシャルメディアの発展もあってむしろコミュニケーション過剰の世界が進行
今ならそれを支持するというスタンスで書く

MixiからTwitter
棲み分けの快楽から不特定多数の人々との規則性がなく偶発的なコミュニケーションへ

AKB
おニャン子はフェイクドキュメンタリー的、秋元がキャラを設定
AKBはダダ漏れ ファンがキャラを創作、集合知的にキャラが確率されていく。

ファンコミュニティから生成したメンバーのキャラクターを秋元が二次創作としてPVやドラマをつくる
それをもとにファンがまたキャラクターを更新していく
キャラクター消費の永久機関

AKBのポイント
1大きなゲーム
2キャラ消費の永久機関
3投票などのゲームシステムがアイドルの身体的魅力を増幅させる



拡張現実「AR」

「例えば商品であるバッグにカメラ付き携帯を向けるとディスプレーにバッグとともに価格や材質などの情報が浮かび上がる技術のように、現実世界の情報に電子的な情報を付加する技術」



虚構の役割は世界の外部に飛び出すのではなく、セカイの内部を多重化すること
リンダリンダリンダはメタ空気系
バブル批判的カウンターカルチャー的なブルーハーツの歌を現実を祝福するための歌に読み替えている。


「あなたはたとえば、難病や白痴の少女ー自分より弱い異性を人形愛的に所有することでマチズモを充足させる行為を、超越性すら孕む崇高な純愛だと錯覚しながら生きることができる。あるいは、在日中国人や韓国人を差別することで日本人である自分に自身を持つ行為を、歴史と伝統に経緯を示す慎重で冷静な知性だと錯覚して生きることができる」


消費者がフリーソフトを用いてキャラを作成し、それ別の消費者によってマッシュアップされ多様化していく


「工程表」

例1,5hのニコ生

1抜き出し 1.5h
2整理1,5h
3解説文1.5h